コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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ワルサー・嘆(な)く 6

 「しばらくの間ワルサーから離れてみてもいいんじゃないか?」神宮寺が言った。「辛いなら無理にワルサーを使う事はないだろう。他の銃を使って、お前が本当に納得しワルサーと向き合えるようになってからまた使えばいい」
 「そうだな・・・。考えてみるよ」
 ジョーが答えた。だが果たしてそんな事ができるだろうか。
 4年間自分を支えてくれた父の形見を・・・自分は使わずにこの仕事を続けて行く事が・・・。
 神宮寺はおれが新しい銃を選ぶために一平に銃のカタログを頼んだ、と言っていたが、それは違う。あれはアメリカでしか手に入らないものだから・・・。いや本当にそれだけか?
 神宮寺に言われるまで気がつかなかっただけで、おれの心の奥底にはそう考えている部分もあったのでは・・・。
 まあいい。どうせ後1、2日は外へ出してもらえそうもない。考える時間はたっぷりある。考えよう─。
 一方JBから出動しているメンバーは混乱していた。
 車のPCナビも通信機もケータイでさえJBと繋がらないのだ。特に容疑者の車を追っている西崎達は捜査課の指示を受けられない状態だ。
 混乱の1日が始まる─。

 「管理課、通信課、情報課、いずれのサーバにも異常は認められないと報告が入ってきています」
 森のデスクの前で佐々木が言った。
 「しかし現にネットが繋がらない。異常がないのに繋がらないのは異常だと思うがね」
 森の言葉に佐々木もそうですね、と報告書を読み返す。
 「例の千葉県警から公安に上がったファイルは捜査課がダウンロード済みですから読めますが」
 「それよりもまず─」と、デスクのフォンが鳴った。通信課からだ。「森だ」
 『中西です。チーフ、JBのすべての通信が遮断されました!』
 「なんだって!?」2人が同時に声を上げた。「どういう事だ」
 『原因は不明です。受信も送信もできません。今もう一度サーバを─』
 『チーフ、山田です』捜査課課長の山田が割り込んできた。『外に出ている者達との連絡が取れません。通信網が─』
 「ちょっと待ってくれ、2人共」森は各課部に通じているフォンをすべてオンにした。「各課部に連絡。通信網に異常が発生している。それに伴う影響や現状を至急報告してくれ。佐々木君は通信課に行ってもう一度サーバのチェックだ。早く原因を特定しないと大変な事になる」
 「え?」
 「忘れたのかね。メインコンピュータに異常が起き修復不可能と判断されたら、サイバーテロ対策としてJBのすべてのコンピュータが停止する。JBが機能しなくなる」あっ!と佐々木が声を上げた。「通信網の異常だけならまだ─」
 『チーフ!』管理課の冨山だ。「JB内外のチェック機能及びドアや窓のセキュリティなどすべてアウトです!外部に出るドアも開閉不能です!」
 「な─」
 2人は絶句した。

 「ジョー」コンと1回ノックして神宮寺が入ってきた。「ホットライン使うぞ」
 「JBに急用か?」
 上半身をベッドに起こしジョーが訊いた。
 「急用じゃないが・・・。午前中に来ると言っていた南さんがまだ来ないんだ」
 「忙しいんじゃねーの」チラッと時計に目を向ける。12時を40分ほど過ぎていた。「おれならもう大丈夫だぜ。わざわざホットライン使うほどの事じゃ─」
 「それが、リビングの電話が通じないんだ」
 「壊れたのか?それともまた電話局のUn fall(ミス)か?」
 「いや、こっち側に問題はない。時報も聞けたし」
 ホットラインの受話器を耳に当てる。しかし応答はない。いやそれどころかウンともスンとも言わないのだ。
 「こっちもだめか」続いてケータイを取り出す。が、やはり相手は出ない。「どうなってるんだ、いったい」
 「JB、電話代滞納してるんじゃねーの」ジョーが思いっきり伸びをした。が、まだ胸は痛いようだ。いてーな、くそ、と文句を言い、「リンクはどうだ?」
 「おれ達の通信機は3つ共JBなんだ。捜査課の通信機と直接通信できるように改良中だ。お前はJBに来ていなかったからな」
 「ふうん」ジョーはベッド横のテーブルの引き出しからスピードマスターを出した。森のコードに合わせ送信する。が、「おい、こっちもだめだ。繋がらない」
 「これは料金の滞納なんて可愛いものではなさそうだな」
 警察組織であるJBは休日というものはない。休みは交替でとるシフトになっていて、たとえ正月だろうと盆休みだろうとJBを動かせる最小人数が常に待機している。だから電話やSメンバー及び各責任者宅に設置されているホットラインに応答しないなどという事はない。ましてや通信機まで─。
 神宮寺はダブルJ室の直通電話にも掛けてみた。が、ジジジ・・・という音が入るばかりだ。
 今度は洸のプライベートケータイに掛ける。これは繋がった。
 「洸、今どこにいる?」
 『自宅だよ。ぼく今日オフだもん』
 「JBと連絡が取れないんだ。一般回線もホットラインも通信機もだめだ」
 『JBってそんなに電話料金滞納しているの?』
 「それならいいんだが・・・いやな予感がする」
 神宮寺の言葉にジョーが思わず彼を見た。こいつがそう言うとロクな事がない。もちろん電話の向こうでは洸が同様に飛び上がっているだろう。
 「これからJBに行く。洸も来てくれ」
 『了解』
 せっかくのオフだがそれどころではなさそうだ。洸が珍しく素直に従う。
 「神宮寺」
 「とにかく行ってみる。1人で大丈夫だな?」ああ、とジョーが頷く。「キッチンにサンドイッチがある。食えるなら食って体力をつけておけ」
 じゃあ、と出て行った。
 ジョーはリビングに移動した。
 4、5日寝ていても衰えるような体の鍛え方はしていないが、やはり足の筋肉が少々鈍っているように感じた。
 神宮寺がいないのをいい事に筋トレでもしようかと思ったが、大きく激しい呼吸はまだ負担が掛かる。それにJBに連絡が取れないという今までになかった事態も気に掛かる。ここはもう少し我慢して、おとなしくしていた方がよさそうだ。
 ジョーは窓越しに神宮寺のポルシェを見送るとキッチンに入った。とたんに足が止まる。
 なんとそこには厚く切ったパンにハム、レタスやトマトを挟んだサンドイッチが、まるで包丁の切れ味をアピールするCMのようにデンッ!と置かれていた。優に30センチはあるだろう。
 「ウマか、おれは」もしこれを1人で全部食べたら体力がつくどころか腹を壊して逆に体力を失いそうだ。「あいつ、常識があるのかないのか、ホントわからん」
 ブツクサ言いながら、それでも神宮寺と2人分にしては多すぎるサンドイッチの山に手を延ばした。
 ジョーも神宮寺の言う“いやな予感”が気に掛かっていた。

 「ミスター」JBの正面ゲートの前に洸のMR?Sが止まっていた。「PCナビが繋がらなくてチェックができないようだ。ゲートが開かないし連絡も取れないよ」
 「なんだって」
 神宮寺がポルシェのナビを管理課に繋げてみた。
 JBの敷地内に入るには登録車と自分自身のチェックを受けなければゲートは開かない。これはSメンバーである自分達もチーフの森も同様だ。
 「こっちもだめだ」
 「どうする?ぶっ壊すか乗り越えるか」
 広い正面ゲートのほかは壁だ。かなりの高さはあるが道具を使えば乗り越えられないわけではない。それこそヘリで敷地内に落としてもらってもいい。だが─。
 「見ろ、洸」神宮寺がゲート越しに建物を指差す。「入り口や窓のシャッターが下りている」
 JBの入り口や窓にはシャッターがついている、もっとも1階と2階だけだが。
 「もしかしたら3階から上の窓もシャットアウトされているかもしれない。それがJB側の守りなのか。それとも─」
 「閉じ込められてるっていうの!?なんで!?」
 「そういえば洸とはケータイが繋がったが、一平とは繋がらなかった。どこにいるんだ?」
 「JBだと思うよ。研修の内容をパソコンにファイルするって言ってたから」
 「つまりJB内にいる人間とは何を使っても繋がらないという事か」
 「通信課のサーバか、もしくはメインコンピュータ・・・」洸の言葉に神宮寺が頷く。
 JBに対する通信は受信も送信もすべてメインコンピュータと通信課のサーバを経由して、それぞれの端末に送られる。ホットラインはもちろん通信機も個人の電話もだ。セキュリティのためだが、もちろんそのほとんどは何の問題もなく通される。
 それができないという事は、どちらかの、もしくは両方の通信機能(サーバ)にトラブルが発生しているという事だ。
 しかしそれでなぜシャッターまで下りているのだろうか。
 「メインコンピュータかもしれないな。それならゲートチェックができないのも頷ける。洸はジョーのマンションに行ってくれ。おれは榊原病院に寄ってから戻る」
 「榊原病院?」
 「ジョーの薬を出してもらう。本当は午前中に南さんが来てくれるはずだったが、おそらくあの中だろう」チラッとJBの建物に目をやる。「榊原さんにも報告してくる」
 「了解」洸がMR―Sに乗り込もうとして、「あ、ジョーの所食べ物ある?ぼく昼食まだなんだ。食べる前に出て来たから」
 「サンドイッチが作ってある。ジョーがウマじゃなかったら残っていると思うぜ」
 スッとポルシェに体を滑り込ませる。2車はそれぞれ左右に分かれた。

 「JBの入り口も正面ゲートも作動しません。シャッターのない3階から上の窓もセキュリティモードになっていて開きません。屋上(ヘリポート)へのキーも作動不能です」
 「つまり我々は、この建物に閉じ込められたというわけか」
 居並ぶ面々を前に森が静かに言う。
 幸いというか・・・各課室のドアは開閉できる。しかしセキュリティシステムを施してある資料室や保管室などはシステム自体がダウンしているのか、まったく作動しない。
 「メインコンピュータのトラブルだと思います」管理課課長の富山が言った。「今、全員で不具合を調べていますが、何時間かかるか─」
 「時間が掛かるのは仕方がない。しかし修復不可能、あるいは乗っ取りとなると」
 はい、と富山が顔を青ざめ頷いた。
 メインコンピュータが強制終了されればJBはただの巨大な箱でしかなくなってしまう。
 「入り口が開かなくても、いざという時はドアをぶち壊せばいい。それよりメインコンピュータの復活が先だ。各課部は万一の場合に備えて待機」はい、と全員が返事をする。と、山田捜査課長に向かって、「出ている者達が心配だが彼らは自己の判断で行動できるはずだ。それを信じてまずこちらを立て直そう」
 「はい、わかりました」
 山田も頷き、他の仲間と共に出て行った。


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