コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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ワルサー・嘆(な)く 7

 「─こっちに行って─モグモグ─だめかァ─パクッ、うん、ハムがうまい─おっ、これか?」カタカタタタ・・・「行かれないな。てっきりバックドアを残してると思ったけど─モグ」
 「洸」横で見ているジョーが呆れたように言う。「食うか叩くかどっちかにしろよ」
 「ハッカーだったら早いとこ見つけた方がいいだろ」
 洸の前にはジョーのノートパソコンが置かれ右手はキーを叩き、左手はサンドイッチを持って洸の口に運んでいる。だが、
 「だめだ。JBのどのサーバにも入れないや」
 「お前でもだめか」
 ジョーが残念そうに呟く。自分でやるのはとうに諦めている。と、玄関のチャイムが鳴り、やがて神宮寺がリビングに入ってきた。
 「薬だ」ジョーに押し付ける。「それを飲んで、サッサとベッドに戻れ」
 「冗談じゃねえ、こんな時に。人ン家(ち)を勝手に対策本部にしておれは仲間外れか」
 「そんな掠れた声で言われても怖くもナンともないぜ」神宮寺はジャケットを脱ぎ、洸の前にあるノーパソのモニタを覗いた。「ハッキングか?」
 「そうかと思って調べたんだけど違うみたい。ゾンビファイルかも」
 「ゾンビファイル?」ジョーが訊いた。「なんだそりゃ」
 「ダウンロードされたファイルにくっついて入る悪意を持ったウイルスファイルに1つさ。ただすぐ作動しないで少し経ってから悪さを始める。プログラムにもよるけど、少しづつコンピュータ内を掻き回していくのもあるから、すぐには気がつかないんだ」
 「だったらそいつをぶっ潰せばいいだろ」
 「あのね」洸がじと目でジョーを見た。「コンピュータの中のファイルだよ。君得意の突破や爆弾でボンッ!というわけにはいかないだろ」
 「出所がわかりプログラムが手に入れば修正プログラムは作れる。しかしそれをどうやってJBのメインコンピュータに取り込ませるかだ」
 神宮寺も口を添える。
 外部からの通信はもちろん、インターネットも繋がらないのだ。残された手段は直接メインコンピュータに修正ファイルを打つ込むしかないのだが─。
 「仕方がない。関さんに相談しよう」
 「関?なんであいつに」
 「と、いうより公安3課にだ。JBに異常があれば当然3課が抑えている。こちらに連絡がないのはJBを経由できないからだろう。ええと、3課への連絡は」3課へは直通電話は一般回線のみ連絡可能だ。が、「なんてことだ。3課にも繋がらない」
 “えっ!”“まさか!”と、他の2人が声を上げた。
 「JBと3課は同じコンピュータではないのに」
 「これって、もしかして地域的な障害じゃねえのか」
 「それならとうにニュースになっているよ。─まてよ、警察庁なら繋がるかも」
 だが神宮寺は迷った。
 JBと繋がりのある警察庁公安3課第2公安捜査第8係は公安課の中でも特殊な部所だ。同じ公安の中でも、その仕事の細部までは明らかにされていないという。その3課に警察庁の真正面から連絡を入れて、こちらはなんと名乗ればいいのだろう。と、
 「ぼく、関さんのケータイの番号知ってるよ」
 サンドイッチを口に収め洸が言った。サイフから関の名刺を出す。ケータイの番号が手書きされていた。
 「なんでこんなものをお前が持ってんだよ」
 「ジョーを口説くように頼まれてさ。いや?、一度君と一晩ゆっくりと過ごしたいと─」
 ガッコーン!と、洸の後頭部が鳴った。
 「いって?、冗談だよお!この前のタッグの時、通信機借りただろ。その登録番号を名刺に書いてくれて、そのついでに訊いただけだって?!」
 「だったら余計な事言うな」
 右手をグーのまま、ジョーが睨む。
 「病人にやられるなよ・・・」
 神宮寺が情けなさそうに洸を見る。しかしその手にはすでに名刺が握られ、関のケータイ番号がプッシュされた。
 「あ、関さん。忙しいところすみません。神宮寺ですが─」
 『おい!いったいどうなっているんだよ!』いきなりの大声に神宮寺は思わず受話器を耳から離した。『JBとまったく連絡が取れないじゃないか!中はどうなっているんだ?犯人は何人だ?どうしてうちに言ってきたんだ?』
 「落ちつけよ、関」ジョーが代わり、スピーカーボタンを押す。これで関の話が後の2人も聞く事ができる。「犯人ってなんだよ。おれ達もJBと─」
 『おー、ジョーか!どうだ、公安に来る気になったか?』
 「なに言ってンだ。それどころじゃねえだろ」
 『風邪でもひいたか?声が掠れてるぞ。しかしそれもまた色っぽいな』
 「てめぇ?。一回潰すぞ!」
 『おお、潰されてみたい!』
 「せ、関さん」受話器を叩きつけようと振り上げたジョーの手から、神宮寺があわてて取り戻す。「おれ達もJBと連絡が取れないんです。犯人ってなんですか」
 『お、そうだった』関が急に真声(顔?)になる。『実は昨夜からネットや通信の一部がダウンしてね。それも3課のサーバだけなんだ。それでバタバタしているところに、ええと・・スペイン語で?土曜日?って・・なんて言う?』
 「Sabado・・・サーバドですか?」
 『そうそう、そのサーバドとか名乗る奴らからメールが来て、うちの、3課の関連施設を抑えたって言うんだ。そこで─』
 「ネットがダメなのにメールが届いたんですか?」
 『ダメといってもずっとではなく、時々思い出したように繋がる。どこかから操作されているのかもしれないが─。それよりその関連施設とやらが気になってね。3課にはそんなものはないし。で、あちこち連絡してみたらJBだけ連絡が取れないんだ』
 「サーバドはJBを公安の一部だと思ったんですね」
 『だと思う。で、JBの内部にサーバドのメンバーを送り込んで制圧しているらしい』
 「まさか!」3人が口々に叫ぶ。「どうやって中に?」
 『連絡がつかないからそれが本当かどうかの確認もできない。で、君達は今どこにいるんだ?JBの中からではないだろ』
 「ジョーのマンションです。洸と3人でたまたまJB外にいたので」
 神宮寺が言葉を切った。3課からも手を回せないとなると、やはり自分達でなんとかするしかないようだ。
 「とにかくJBに入る手段を考えてみます」
 『こっちも何かわかったら連絡する。そこか、誰かのケータイの番号を教えてくれ』
 「いいか、ジョー?」
 神宮寺に問われジョーが渋々と頷く。関にジョーのマンションと自分のケータイの番号を教え電話を切った。
 「ヘタしたら毎日ラブコールだね。ジョー」
 「これが終わったら電話番号変えてやる」
 再び洸の後頭部をゴンッ!と叩き、神宮寺の方へ向き直ろうとした。が、ストンと体がソファに落ちた。
 「お前、もう休め」思い出したように神宮寺が言った。「熱が上がるぞ」
 「おれの事よりどうやったらJBに入れるか考えろ」一息つき、ジョーがゆっくりとソファから体を起こした。「ハデな事はできないぞ。中のサーバドとやらに悟られないように侵入しないと」
 「かえって難しいよなァ」
 洸がミネラルウォーターのボトルをジョーに手渡した。ゆっくりと喉に流し込むジョーを見て、まだだめか、と神宮寺は思う。
 洸も一平も西崎や立花達も、神宮寺には信頼できる仲間だが、やはりジョーとは違う。そばにいるだけで頼もしく安心できるのだ。これはジョーも同様だった。
 「そうだな。ハデにしていいなら屋上に爆薬落とせばすぐ下はチーフの部屋だし」
 ジョーが呟くのを、これさえなければ、もっと安心感が増すのに、と神宮寺は思った。と、突然ケータイの着メロが流れた。洸がバッグに入れておいたケータイを取り出す。
 『洸?』中根だ。『よかった、やっと繋がったぞ。JBと連絡が取れないんだ』
 「神宮寺だ。今どこにいる?人数は?」
 『立花達4人は容疑者を護送し市ヶ谷に向かっている。今、JBの正面ゲートの前だけど入れなくて─。ぼくと西崎の2人だけど』
 「洸、今までの経過を中根に説明してくれ」
 神宮寺は洸にケータイを渡し、その場に立ったまま考え始めた。眉を少し寄せ、黒曜石の瞳で一点を見つめ微動だにしない。
 神宮寺という頭脳がフル作動している。
 (こいつのこんな顔(ツラ)見ると、なんかワクワクするんだよな)
 すぐそばのソファから彼の横顔を見上げジョーが思う。
 多くの場合、頭を使う作戦は神宮寺が、動きを主とする作戦はジョーが考える。分担したわけではなく自然とそうなっていた。
 「洸、中根達にジョーのマンションまで来るよう伝えてくれ」
 洸に指示し、ふとその目をジョーに向けた。
 黒曜石の輝きを受け、ジョーがニッと口元を歪める。

 「侵入者は5人から8人。今、食堂と管理課に立て籠もっています」
 「正面ゲートのチェックがダウンする一瞬の間に侵入されたという事か」
 「ええ、ですが・・」佐々木がちょっと口籠もり、森が彼を凝視した。「報告では、侵入した奴らは・・・なんと言うか・・・途惑っているように見えると・・。間違って入ってしまったというような・・・」
 「は?なんだね、それは?」
 「侵入者が、“ここは公安ではないのか!?”と言っているのを聞いた者がいます」
 「公安課と間違えて入ったという事か?」
 たぶん・・・と、佐々木も戸惑い気味に答えた。
 しかし本命だろうと間違いだろうと侵入者をこのままにしておくわけにはいかない。奴らは食堂で調理師達を数人拘束し、管理課ではメインコンピュータを抑えているのだ。
 「自分達が侵入した所がどういう所なのか・・・思い知らせてやろう」
 森の言葉に佐々木はちょっといたずらっ子のような目をして頷いた。


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