コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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封印されし記憶 4

   保谷市の外れの現場は、300m手前で交通規制がされていた。
   ジョーはアテンザのPCナビをオンにする。JBのサーバと繋がっていて必要な情報を得る事ができる。ログオンパスワードは万一の事を考えて立花から聞いていた。
  モニタには、通行止めになっている箇所が表示される。どうやら現場は山の上の病院跡らしく、そこへ通じる道は1本しかない。
  「チェ・・、正面から突破するしかねえか」
  ジョーはそのまま車を走らせる。
  交通規制といっても普段は人通りがない道なので、報道関係者をシャットアウトしているらしい。道路に赤いコーンが置いてあるだけだ。
  それでもまわりはパトカーや警官が何人もいる。突然走り込んできた車に停止を呼びかけた。
  ジョーはスピードを上げるとコーンを蹴散らし突破した。警官がどこかへ連絡している姿が見えたが知った事ではない。さらに100mほど上がると大きな建物が見えてきた。JB捜査隊の車が何台も止まっている。
   「ジョー!?」急に飛び込んできたアテンザから降りてきたジョーを最初に見つけたのは西崎だった「どうして君がここに?」
  「何してるんだ、ここで」
  ジョーは西崎の問いを無視した。見ると建物の入口から50mも手前で、何人もの機動隊の連中が待機している。
  「奴らの要求だ。交渉役で眉村さんと神宮寺が入っている」
  「なんだって」
  眉村は捜査課の副課長だ。銃を使わないので有名な人で、そのため以前ジョーと対立した事もある。どうやら指揮は眉村が執っているようだ。
  「なに甘ちょろいことやってんだ。一気に攻め込んだ方が早い」
  「だめだ。向こうの人数がわからない。昨日逃げた2人だけではないようだ。おまけに爆発物を持っている。あの建物の裏の下は住宅地だ」
  だがジョーは西崎の言葉など聞いていない。建物の入口に目をやっている。
  「ジョー!待機命令が出ているんだ!命令違反をするつもりか!」
  「忘れたのか西崎」ジョーが振り返り口元を歪めた「おれはSメンバーだ。誰の指揮下にも入ってねえ」
  「そ、それは詭弁だ!」
  「キベン?なんだそりゃあ?」
  「・・・」
  西崎が詰まった。ジョーに難しい日本語を使った事を後悔する。そのすきにジョーが飛び出した。たちまち建物から弾丸の雨が降り注ぐ。
  「ジョー!」
  昨日の不安定さが嘘のようだ。ジョーにいつもの鋭さが戻ってきている。いや、ここまでくると無謀さと言っていい。
  「仕方がない。おれはジョーのあとを追う。援護してくれ」
  そう言うと、西崎も入口目がけて走る。残された仲間達が彼の援護射撃に入る。本当は彼らだってこんな所で待機などしていたくはないのだ。
  その思いが射撃に現れたのか、相手はすぐにおとなしくなった。そのすきに2人は入口に飛び込む。
  「なんでェ。結局お前もくるんじゃねえか」ジョーが毒づく。
  「おれ達は2人1組が決まりだからな」
  「だから、おれは機動隊じゃねえって」
  「それよりジョー、銃はどうしたんだ?持って来なかったのか?」
  ジョーの手元を見て西崎が問う。
  今のような強行突破はSメンバーの十八番(おはこ)だ。しかしそれでも必ず銃は携える。実際に撃たなくてもだ。
  ジョーの動きが止まる。一瞬戸惑うように自分の手を見る。小さく息が漏れた。と、突然2人の左側の階段から5人の男達が駆け降りてきて、いっせいに銃を撃ってきた。さっき2階から撃ってきた奴らだ。おまけに建物の奥から小さな爆発音が響いてきた。黒煙が吹っ飛んでくる。
  「チッ!交渉決裂かい!」
  ジョーが叫ぶと同時に、待機していた機動隊の連中が入口から飛び込んできた。全員仲良く命令違反だ「伊藤!ここは頼んだぜ!」
  ジョーが叫び奥へと向かう。西崎と高浜がついてくる。
  元は病院というだけあって、いくつもの部屋が並んでいる。しかしそのほとんどは荒れはて壁が崩れドアがなくなっていた。だが身を隠す所は事欠かない。
  横から不意に男が飛び出してきた。銃口を向けてくる。が、高浜に足を撃ち抜かれ転がった。
  さらに進むと少し広い空間に出た。待合室のようだ。と、その中央で眉村が大柄の男と取っ組みあっていた。加勢しようと駆け寄る。
  「大丈夫だ!」ジョーを見て驚いた眉村だったが、細かい事はあとにしようと考えたようだ「それよりもう1人逃げた!神宮寺君が追っている。爆発物を持って裏庭の方に行った!」
  高浜が眉村の加勢に入る。ジョーと西崎は眉村が指さす方向へ走った。突然、明るくなる。ジョーが一瞬顔をしかめる。壁がなくなっていてそのまま裏庭に出られた。雑草が伸び放題だが、かなり広い。そこに2人の男が対峙していた。
  手前で、背中をこちらに向けているのが神宮寺。そこから20m向こうに、テロリストの男が立っていた。手にした爆発物を掲げている。
  神宮寺がジョーと西崎に気がついた。
  「来るな!奴は爆発物を持っている!」
  「そんな物にビビっているのかい。えっ、神宮寺!」ジョーが返す。
  「・・奴の後ろは住宅地だ」神宮寺が睨む。
  この元病院は高い丘の上に建っている。裏庭は低い垣根で囲われているが、その向こう側は住宅地が広がっている。何か落とせば確実に住宅地まで転がり届くだろう。
  「くそォ・・」ジョーが唸り、男に目をやる「あ、あいつは昨日の!」
  目の前の男は昨日ジョーが逃がした奴だ。おまけに捕り物の最後の1人らしい。
  「ヤロウ・・今日こそ逃がさねえぞ・・」ジョーが一歩前に出た。
  「下がれ、ジョー!」神宮寺の声が飛ぶ。
  「うるせえ!お前こそどけ!」
  ジョーは、あっという間に神宮寺の横を走り抜け、男の手前10mの所まで近づく。
  ジョーの無茶はいつもの事だが、こんな場面でこんな無茶はしない。何かが違う。と、ブレザの内ポケットからゆっくりとワルサーを出し、相手に銃口を向ける。
   「爆弾、抛ってもいいぜ。同時にお前も蜂の巣だ・・」
  「?」
  テロリストの男は日本語などわからないだろう。だが目の前の男が本気だという事はわかったようだ。爆発物を手にしたまま動けない。
  「い、いかん・・」西崎が呟く「ジョーは奴を撃つ気だ・・」
  小さなその声が、前方の神宮寺にまで届いた。
  (いける!)
  ジョーの指先がトリガーに掛かる。?フイに目の前に大きな影が浮かび上がってきた。黒い大きな影はやがて人の形になる。外国人の・・クロード?・・・・いや違う・・・。カルディ・・・
  (な、なんー)ジョーはトリガーに指を掛けたまま、しかし撃つ事もできず、カルディの顔をした影を茫然と見つめる。
  『お前の持っている銃で、おれはお前の両親を撃ったー』影が言った『そしてお前は、その銃で何をしようというのだー』
  (お・・おれは・・)
  全身が小さく、激しく震える。ワルサーを握る両手が硬直したまま動かない。左肩が痛い。口元がガクガクと震える。
  『その銃でお前も人を撃つーおれと同じだなー』
  「ち、違う!おれはー!」
  声が出た。体がフラッと前に傾く。辛うじて踏み止まる。それでもワルサーの銃口は相手に向けたままだ。
  ジョーの異変は後方にいる神宮寺や西崎も気がついた。ましてや対峙している男が気がつかないはずはない。あとの2人が動く前に、右手を大きく振りかぶり爆発物を空高く放り投げた。
  「伏せろ!」
  神宮寺が叫び、手にしていた44オートマグで落下していく爆発物を捕らえ撃ち抜いた。轟音と閃光が四方八方に飛ぶ。地面に伏せた神宮寺と西崎の上に細かい金属片がバラバラと降り注いだ。
  「に、西崎、無事か?」
  「・・ミスター・・、ジョーが・・」
  え?、と振り返る神宮寺の目に、光に向かって立つ黒いシルエットが映った。
  ジョーだ。
  彼は爆発から身を隠しもせず、その場に立っていた。爆風をもろに受けたのだろう。髪は大きく後ろに靡き、服もあちこち焼け焦げている。
  それでも彼はそのままの姿で立っていた。銃口を前方に向けたままーしかしその目には何も映っていなかった。彼の時間はそのままの形で止まっていた。
  まさか爆弾を銃で撃たれるとは思わなかったのだろう。逃げるタイミングを失った男は小型の銃を抜き、ジョーに狙いを合わせた。
  「ジョー!」
  神宮寺が立ち上がろうとしたが、右足に痛みを感じ膝を付いた。飛んできた破片で切ったのか、血が出ている。
  「西崎!」
  言われるまでもなく、西崎が走る。捜査課1の俊足ですぐさまジョーの横に並ぶ。銃口を男に向けた。銃声が1発響く。
  「!」
  その音でジョーが我れに帰った。首をめぐらせ横を見る。体をくの字に曲げ、後ろに飛んでいく男の姿が映った。
  「・・・西崎?」
  ジョーの目が男ー西崎を追う。西崎はドッ!と仰向けに倒れた。腹からは真っ赤な血が噴出している。だが、それを見てもジョーの表情は変わらない。ただ目を向けているだけだ。
  その目線の隅で、地面に膝を付いている神宮寺の銃口が上がったのが見えた。
  銃声が響くー。
  それでもジョーは動かず、ただ黙って見ているだけだった。

 
  JBビルの4階のワンフロアと5階の半分が捜査課室になっている。総勢80人あまりが詰める、JBでは1番の大所帯だ。
  今、4階のフロアでは、保谷での事件の報告書を書いたり後始末などで、捜査課のメンバーが忙しく動いている。交渉役で眉村と2人建物に入った神宮寺も、山田捜査課課長へお報告を済ませたあと、ここに残り手伝っている。
  本当は彼が捜査課の仕事をする必要はない。6階にあるダブルJ専用室に帰って休んでいてもよいのだ。
  しかし神宮寺はそのまま残った。榊原病院に運ばれた西崎の手術が、1時間ほど前に始まったからだ。
  森チーフは不在。佐々木サブチーフも海外出張組と同行している。もし病院から何らかの連絡が入るとしたら、ダイレクトに捜査課に入るだろう。他の捜査課のメンバーも、時々時計や課長室もドアに目をやっている。
  神宮寺は目の前のパソコンのモニタから目を外した。その目を、部屋の隅にあるソファに座っているジョーに向けた。
  彼は体を前かがみにし、両手を膝の上に放り出すようにして、もう長い時間その姿勢のまま動かない。目を瞑っているので眠っているのかと思ったが、そうでもなさそうだ。時々大きく息をつく。
  彼もやはり、山田捜査課課長に報告するためにここに出向いたのだ。
  本来、ジョーは呼び出しを受けてはいない。勝手に参戦した説明は省いたらしい。あとは覚えている事を話した。所々話が飛ぶが、先に神宮寺の話を聞いていた山田は口を挟まず一通りジョーの話を聞いた。
  山田に解放されたジョーは、しかし6階の部屋には戻らず、そのまま隅のソファに座り込んだのだ。
  捜査課にもジョーと親しいメンバーが何人かいる。ジョーの様子がいつもと違うのを気にしている様だったが、神宮寺でさえ声を掛けられないでいる今のジョーに、誰も何も言えない。
  ジョーに対して好意的な者もいれば、批判的な目を向ける者もいる。
  今回、テロリストは全員あの場で確保されたからよいが、ジョーの命令違反と先走り過ぎは明らかだ。それが西崎をあのような窮地に追い込んだと考える者もいる。
  ジョーが慎重に物事を運んでいれば・・いや、ジョーが来なければもっと違う結果になっていて、西崎も撃たれる事がなかったかもしれないーそう言っている視線を神宮寺は感じていた。
  ジョーは自分を批判する者から逃げない。自ら身を晒し受け止めて来た。しかし今回ばかりはその視線に気が付かないのか、それとも身を晒す気力がないのか・・・。彼は俯き、ただ時間だけが過ぎていく。
  「ジョー」課長室のドアが開き、山田が呼んだ「6階の部屋に戻ってくれ。パリ本部の鷲尾長官から君へのホットラインが入っている」
  それを聞いた全員が驚いて手を止める。視線がジョーにあつまる。が、彼は動かない。山田も急がせるような事はしないが、神宮寺がジョーを促そうと立ち上がると、やっと顔を上げた。それもゆっくりと・・まるでまわりの状況を今初めて見るように・・。
  そしてジョーはやはりゆっくりと立ち上がると、山田を見て小さく頭を下げ捜査課を出て行った。
  男達は身動きひとつぜずジョーを見送る。神宮寺でさえも・・・。

 

 

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Comment

淳 says... "覚書き"
淳の日常に対して非日常的な彼ら。
その話を作り自分の日常に戻すのはしんどい。息子のGではないが「切り替えろ!」(サッカーのGKが良く言う言葉)と意識している。
それでもやはり今までのスタイルは変わらないし、一生懸命考えている時はストーリーは流れない。
ポーとしているか何か別の事をしているとふっと流れて行く。
食事の支度をしながら流れて行くストーリーを記憶するのは大変だ。

2010.12.17 15:47 | URL | #vDtZmC8A [edit]

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