コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Posted by  朝倉 淳   0 comments   0 trackback

つながる想い 3

 呼び出しはなかったものの、一平は朝早くにJBに来ていた。
 朝食は食堂でホットドックセットを頼む。
 ここにくる前に森の部屋に寄って夕べの話し合いの結果を聞いた。結局、公安の獲物である組織には手をつけず、洸だけ引き上げさせる事で話がついた。が、帰って来い!と迎えに行くわけにもいかない。
 友人のふりをして掛けたケータイは繋がらないし、Gショックも電源が切られている。先日の改良で新しい機能がプラスされたものの、オフになっているのではどうしようもない。ただ彼らが泊り込んでいる場所は公安に聞いていた。
 「友人の心配をするのもいいけど、自分の立場も考えろよな」
 もう何度呟いたかわからない。
 一見すると一平の方が無鉄砲そうに見えるが、実は洸の方が思考直行型だ。考えた事がすぐさま行動に繋がる。
 「せめて相棒のおれを連れてけよ」
 マスタードをたっぷりきかせたホットドックを頬張る。今さらながら神宮寺の気持ちがわかるような気がした。と、彼のクロノグラフが鳴った。
 「洸?」
 発信ナンバーは洸のものだ。文字盤がスクリーンに変わり文字が走る。
 「おはよ、一平」神宮寺だ。「早いな」
 「ちょうどいい、神宮寺。洸からの通信だ」
 一平がスクリーンを神宮寺に向けた。
 「3日、中目3、AM9、京浜B─なんだろう・・・」
 内容はこれだけだ。だがおそらくケータイも使えないなかで精一杯の通信なのだろう。誰も洸が腕時計型通信機を持っているなんて思っていないから、ヘタすればかなり目立つ行動だ。
 「3日は今日だ。AM9もわかる。だが中目3と京浜Bは・・・」
 「もしかしたら」
 一平がバッグからノートパソコンを取り出す。アクセスし?ゲームあきら?の?国際秘密警察悪童軍団?というゲームサイトに入った。
 「やっぱりだ。この書き方はゲーム上での場所や建物を表わす。中目3は中目黒3丁目、京浜Bは京浜銀行─洸がゲーム上でよく使う略語だ」
 「今日の9時、中目黒3丁目の京浜銀行・・・。銀行強盗でもするつもりか─。9時まであと1時間だ。とにかくチーフに知らせよう」
 2人は揃って食堂を後にした。

 京浜銀行中目黒支店で小規模の爆発事故があったとテレビのニュースが報じたのは事故のわずか10分後だった。
 取材のため山手通りを渋谷方面に向かっていたテレビ局の中継車が中目黒に差し掛かった時、その爆発は起きたのだ。おかげでまだ黒煙が立ち昇る生々しい現場の様子を多くの視聴者が目にする事になった。
 それはここJB内でも同様だ。だが
 「くそォ、ちゃんと知らせたのに」一平が悔しそうに言った。「警視庁は何をしてるんだ」
 「うかつだった」神宮寺も唇を噛む。「銀行を襲うと言われれば最初に頭に浮かぶのは強盗だ。だが相手は過激派。当然、爆弾の事も意識すべきだった」
 洸が知らせてきた内容には?9時?とあったが、実際に爆発が起きたのはその10分ほど前で店内に客はおらず人的被害はない。
 爆弾は郵便物の中に混じっていたらしく店内奥の集荷場に置いてあり、爆発当時銀行員は全員店頭へ出ていたのでこちらもケガ人はない。ただ窓から流れ出る黒煙が山手通りまで届いていた。
 「だがこれで洸がK4にいる事がはっきりしたな」西崎が言った。?K4?─ケイフォーとは公安がつけたこの組織の呼び名だ。「洸の事は新宿署の特別課に任せてJBは関与しない事に話がついたらしいが、これからも洸から情報が入るとすると・・・」
 「おれ達が動いた方がいいかもな」一平が言う。「ところでジョーは?今朝は見てないな」
 「そういえば、昨夜関さんにさらわれたままだ」
 「えっ!?」全員が声を上げた。「そんな危ない事して・・。大丈夫か、ジョー」
 「何が危ないって?」
 その声に皆が振り向く。怪訝そうな表情のジョーがいた。
 「ジョー!よかった、無事だったんだね」
 「?」
 「いや・・、関さんの餌食になったのかと─」
 ガゴンッ!と高浜の後頭部が鳴った。
 「で、なんだ?この騒ぎは」
 右手をグーにしたままテレビに目を向ける。
 「ニュース見てないのか?」
 「夕べはちょっと遅くまで起きていたから─」
 やっぱり・・・と声なく呟く高浜に再び右手を握ってみせた。だいぶ慣れたがやはりジョーの睨み目は怖い。
 「実は洸が─」
 一平が今朝からの事を説明した。
 「やっぱりあいつ・・・」
 かすかに目を眇め、踵を返した。
 「ジョー」ドアに向かうジョーを神宮寺が呼び止めた。「勝手に動くな」
 「・・・・・」
 チラッと神宮寺を見る。
 「洸の事は左近さんに任せるそうだ。手を出すんじゃないぞ」
 「・・・わかってるよ」
 そのまま出て行く。
 「わかってると、思うか?」
 神宮寺の問いに全員がブルブルと首を振った。

 「・・・わかってるよ」
 そう言い残し休憩室を出て来た。人気のない廊下を東館に向かう。
 ジョーにだってわかっているのだ。チーフの指令がなければ出動できないし、個人の勝手な行動が時として命取りになる事ぐらい。
 ましてや今回の件の直接の担当は公安3課だ。そして洸の件は新宿署特別課扱いになる。JBが勝手に手を出す事は許されない。─とは言うものの・・・。深く考えもせず言った自分の言葉で洸が潜入を決意したとすればやはり気になる。一緒に立ってやればよかったと思ってしまう。
 「Sackerlot(ちくしょう)」悪言が口から漏れる。「Wenn es ist? Das Sehen、ohre     alles zu halten(動くなだと?何もしないで見ていろというのか)」
 ジョーは眼下のスポーツジムを見ながら2階のギャラリーを抜け、狙撃部の部屋の前へ出た。ノックすると返事があった。
 「おい、ジョー」高木が振り返る。「気が早いな。さっき預かったばかりだぞ」
 と、手元のウッズマンを指差した。昨夜、関から受け取ったマッチターゲットだ。より良い分解整備をしてもらうため、今朝─と言ってもジョーがJBに出勤したのは1時間前なのだが─高木に預けたのだ。
 「かなりの年月、使っていないようだな。だが手入れはきちんとされている。あの男(関)は見かけによらず几帳面なんだな」トレイの上にバラバラにされたウッズマンのパーツが並べられている。6インチのバレルだけでも見応えがある。「各パーツに欠損はない。ちょっと磨いてやればOKだ」
 「いつ使えます?」
 「そうだな・・・。長い事使ってないからな・・・。組み立ててから動作テストをした方がいい。こればかりは見ただけではわからないからな」高木はジョーを見て、「それは私がやる。1日あればいいだろう。明日の午後には君に渡せる」
 「お願いします」
 ジョーは頷き、銀色に光るウッズマンに目をやった。

 洸から一平のクロノグラフへ2回目の情報が入ったのは昼を少し過ぎた頃だった。
 今度は短く『新宿ビル』だけだ。1回目のように日付も時間もない。
 Sメンバーの持つ腕時計型通信機は短いメールも打てるが、ケータイの?それ?よりは少し手順が多くなる。敵の真っ只中でこれだけ打つのが精一杯だったのかもしれない。という事は時間的に、つまり何かが起こるまであまり余裕がないという事か。
 しかし日本に、いや新宿区だけでも「新宿ビル」と名がつく建物がそのくらいあるだろう。
 「もしかしたら新宿ビル街─西口の副都心の事かもしれない」
 一平の知らせを受け、森は彼と神宮寺、ジョー、佐々木を部屋に呼んだ。
 「あんな所でもし爆発があったら─あっ!」一平のクロノグラフが鳴り、スクリーンに文字が走る。「くんれん・・・訓練?」
 「まさか洸達は、テロリストの訓練のためにこんな事をやらされている?」
 「あのバカ。さっさと脱出してきやがれ」ジョーが舌を鳴らす。「ヘンに欲を出して・・・もしバレたらどうなると思ってるんだ」
 だが洸の気持ちもわかる。
 確かに始めは友人の身を心配して潜入したのだろうが、目の前に事件を起こそうとしている集団がいれば情報を取り阻止したいと思うのはSメンバーとしては当然だ。
 そしてそれがJBを動かした。もう公安3課や特別課だけに任せておくわけにはいかない。大事になる前に手を打たなければ。
 「すでに公安3課がK4のアジトに向かっている」先日、洸の写真が撮られた所だ。「特別課とうちの捜査課が新宿一帯を巡回している。君達は待機を─」
 「我々も回ります」神宮寺が言った。「この?新宿ビル?が本当に新宿区内の事かわからない今、人手は多い方がいいでしょう」
 「だが闇雲に車を走らせてもしょーがねえぜ」
 「そうだが、しかし情報があまりにも少なく不確かだ。そして範囲は広い。動ける者は動いた方がいいと思う」
 神宮寺の言葉にジョーがヒョイっと肩をすくめる。と、室内フォンが鳴った。佐々木が出ると相手は通信課だった。
 「なんだって?─わかった」受話器を置くと、「公安からの連絡で、奴らのアジトはもう誰もいないそうです。20人いた男達がすべて─」
 「まさか洸の事がバレて・・・」一平が呟いた。
 「行こうぜ」ジョーが踵を返しドアに向かう。
 「ジョー、おれはヘリで上空を回る。一平と組んでくれ。いいですか?チーフ」
 神宮寺が森を振り返り、彼が頷くのを確認する。
 やがてJBの屋上ヘリポートから自ら操縦桿を握る神宮寺の乗ったヘリが、そして地下駐車場からはジョーと一平を乗せたセリカが新宿の街に向かった。
 チーフの話では公安3課から10台、特別課から3台、そしてJBからは後発のセリカを入れて16台とヘリ1機が出ているという。
 それでも新宿を網羅する事は難しい。どうしても副都心部や繁華街に多くの人数を回さざるおえない。それでも時間や場所がはっきりしていれば、その時だけ交通規制や人々の立入禁止の処置もとれるのだが、?新宿ビル?というだけではどうしようもない。
 ジョーの運転するセリカは指定された新宿ビル街へ向かった。
 「そういえば一平の銃はコルト・ガバメントだったよな」
 明治通りを新宿駅方向に車を走らせながら、ふとジョーが隣の一平に訊いた。
 「そう、コルト・ガバメントMK、IVシリーズ08。最終市販型」
 一平が、前モデルから替えたばかりの45ACP弾を使用する銃を胸のホルスタから取り出した。
 1911年にアメリカ軍に採用されてから今日までの長い年月愛され使われ続けてきたコルト社を代表する銃の1つだ。
 「これはステンレス製だけど1キロを越えて少々重めなんだ。でもガバメントのこのガチッとしたところが好きさ」
 「ふうん・・・」横目でチラッと見て、「ウッズマン、知ってるか?」
 「もちろんさ。あの銃も格好いいな。昔、ナントカいうマンガの主人公が使っていたとかでモデルガンが結構売れたらしい。本物は何度か改良してスポーツタイプも出てるけど、今は流通してないんじゃないかな」
 「今はもう製造していないのか?」
 「だと思うけど・・。急にどうしたんだ?新しい銃じゃないぜ」
 「・・・・・」
 ジョーは答えず、甲州街道とぶつかった所で左折した。
 知らない人が見ればジョーの態度は不遜そのものだが、慣れている一平は何も言わなかった。ジョーの様子から、つい言ってしまったが後悔しているのがわかったからだ。
 そうジョーは後悔していた。まだあのウッズマンを使うとは・・・いや、使えるとは限らない.
 長年、箱の中で過ごしてきた銃だ。もし少しでも動作に不具合があったら高木はOKを出してはくれないだろう。そうすればまた─。
 そんな思いを振り切るようにジョーはステアリングを繰る。
 十二社通りに入り新宿中央公園を右手に見ながら高層ビル街を大きく回る。
 途中何度かJBの捜査車両と擦れ違った。
 JBの車両は1種類ではない。長時間の張り込みを見越して何種かの異なるメーカーの車が揃えられている。今擦れ違ったのはホンダのインテグラ、さっきはトヨタのハリヤだった。向こうもジョーのセリカを視認している。
 2周ほどするといつもよりパトカーが多く走っているのに気がついた。公安の方から警視庁に協力を頼んだのだろう。だが
 「洸・・・知らせてこないかな・・」
 一平が呟いた。ヘタな行動をすれば洸が危なくなるのはわかっている。しかしもしビル街で爆発事故が起きたら─。
 「爆弾だったらもう仕掛けられているのか、それとも車にでも積んでチャンスを窺っているのか。いやそれこそ空から落としてもいい。やり方はたくさんある」ジョーが苛立ち唇を噛む。 「だが、もし爆弾じゃないとしたら・・・」
 『ジョー』セリカのPCナビに神宮寺からの通信が入った。『西新宿8丁目の中学校の北    200mの所に建つビルの前に人が集まっている。確認してくれ』
 「ラジャ!」
 ジョーがステアリングを繰る。キリッとタイヤが鳴いてセリカが右折すると東通りを突っ切った。中学校を左手に見て 200mほど行くと税務署通り際の10階建てのビルの前に人が集まり、消防車のような赤い車が停まっていた。
 「火事か?」
 だが煙は見えない。と、運転席の窓を誰かがコンと叩いた。
 「ジョー」立花だ。ジョーが窓を下げる。「火災時の避難訓練だってさ」
 「避難訓練?」2人が同時に言った。「なんだあ」
 「そういう訓練をプロデュースしてくれる会社があるんだってね。あの消防車みたいなのもその会社の車で消防士役もいるそうだ」
 なるほど。確かに消防士のような装備をした男達が担架でビルから人を運び出したり誘導したりしている。
 「感心な事だな」
 顔面に“紛らわしい事するな!”と文句を貼り付け、ジョーは神宮寺に知らせようとナビのスイッチを入れた。が、
 「訓練だって?」2人が怪訝そうにジョーを見る。「洸が知らせてきた?訓練?って─」
 “あっ!”“ま、まさか!”と2人が声を上げた。と、同時にボンッ!と轟音が響き、建物の7階辺りから黒煙が吹き出した。
 とっさに車外に出たジョーや一平の上に、キラキラ光るガラスの破片が降り注ぐ。路上で訓練の続きをしていたそのビルの人達が一瞬アッケにとられてビルを見上げた。と、消防士役の男達が5、6人ビルに飛び込んでいく。
 「あいつらだ!」
 叫んで自分もビルに走り込んだ。一平が続く。立花は同乗していた中根と手分けして各車に連絡をする。
 爆発は上階で起きたので下階に異常はなく、それでも2人はエレベータを使わずに階段を駆け上がった。行く先でボンッ!と再び爆音がした。7階の廊下を黒煙が流れていく。かすかに人の声がした。そちらに向かう。と、廊下の隅で男が1人しゃがみ込み何かしていた。その手元に機械が見える。
 「きさま」
 ジョーの声に男が振り向いた。とっさに敵だとお互いが感じたようだ。いきなり足を伸ばしジョーの足を払おうとした。が、直前に飛び退く。一平も男に向かおうとしたが、
 「一平!先に進め!」
 一平が動きを止め、男の横を走り抜けようとした。男が手を出した。ジョーが飛びつき2人はゴロゴロと転がった。こうなると体の大きいジョーが有利だ。男の上になり両手で相手の肩を押え込むが、男が内側からジョーの右手を思いっきり横に払った。
 「あっ!」
 腕に体重を乗せていたジョーが男の胸に俯す。髪を掴まれ後ろにグイッと引っ張られた。が、残った左手が男の胸倉を掴み、相手の引く力を利用し男の体を起こした。そして自分の体重を掛け男を床に押し倒した。
 ゴンッ!という音と共に男が伸びる。ジョーは男の服を探ったが身元のわかる物はなかった。と、再び先方から、続いて下階からも小さな爆発音が響いた。
 「一平!」
 ジョーが走り出す。と、事務机がたくさん置いてある広い部屋から黒煙が吹き出てきた。
 「ジョー」一平は手前の机の陰にいた。「3、4人いるが、なんか変だ。右往左往している」
 「さっきの男がリーダーだったのかもしれないな。─おっ」
 2人が伏せた。部屋の奥が一瞬ひかり、バムッ!と爆音がした。
 「奴ら・・・」呆然と呟き、「ここの社員は?」
 「ここにいるのは消防士の服を着た奴らだけだ」
 「出よう!」
 黒煙が襲い掛かってきた。
 2人は部屋を出て、まだ伸びている男をジョーが担ぎ横の階段を見たが煙は階下からも上がってくる。仕方なく屋上まで駆け上がった。
 屋上を含めた訓練が組まれていたのかドアのカギは開いていた。と、上空からハデなブレード音が降りてきた。
 「神宮寺!」
 「奴らの仲間か?」屋上に小型ヘリを着陸させ神宮寺が言った。ジョーが頷き空いているもう一方のシートに男を投げ入れベルトで動けないように固定した。「だがあの様子では階段は使えないな」
 屋上のドアからも黒煙が吹き出している。神宮寺の乗るヘリは2人乗りだ。騒ぎが収まるまで屋上で待っていてもいいのだが。
 「中央公園まで持つか?」ジョーが訊いた。
 「・・・やってみよう」
 2人の間で一瞬のうちに話が決まる。そばで聞いていた一平が途惑った顔をしている。が、神宮寺は操縦席につきブレードの回転が始まった。
 「落ちるなよ、一平」
 わずかに上昇したスキッドに足を掛けジョーが言った。
 「え、え?」
 一平もあわてて反対側のスキッドに登る。
 「重いぞ」
 文句を1つ言うと、神宮寺は少し傾いたヘリをゆっくり上昇させ、クルリと方向転換し、約 800mほど先の新宿中央公園に機首を向けた。


                   2 へ        ⇔       4 へ
スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://junstory.blog63.fc2.com/tb.php/92-995e0000
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。