コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳   0 comments   0 trackback

つながる想い 4

 確保した男は公安3課に送られた。
 ジョーと一平は不満気だったが主体はあちらなので仕方がない。2人は食堂でコーヒーを啜りながら一頻り文句を飛ばしていたが、そのネタも尽きたらしく今はボーとしている。と、
  「ジョー、セリカを地下に入れておいたぜ」
 そう言い立花がピンッとキーを弾いた。
  「Danke、立花」
 ジョーが右手でキーを受けた。
 あの後2人は中央公園の上で落としてもらい、連絡を受け近くを走っていた伊藤の車に同乗してJBに戻った。
 現場に乗り捨てたセリカは立花がJBまで運んでくれた。あのまま置いておけば警察が関与するだろう。新宿署にはJB直属の特別課があるのでそこを通して引き取ればいいのだが、車内に備えられているJB用の装置や銃などが見つかると面倒だ。特別課以外は国際警察の細部については知らせれていないのだ。
 もっともジョーに劣らず車好きの立花は、セリカ本体の方が気になっていたかもしれないが。
  「まったく神宮寺の奴、あいつをそのまま公安まで運んじまうなんてよ」
  「そう命令されたんだ。仕方ないさ」
  「そのかわり公安に居座っているらしいよ、ミスター」いたずらっ子のような目で立花が言う。「重量オーバーで無理したから、ヘリが動かないとか言って」
 「いいぞォ、そのまま情報が取れるまで帰ってくるな!いざとなったら関にひっついて、キスの1つや2つ─テッ!」ジョーの後頭部がゴンッ!と鳴った。「あ─」
 「今度からその役はお前に回してやる」
 右手をグーにした神宮寺が立っていた。
 「早かったね、ミスター。で、何かわかった?」
 「まだだ。とりあえず公安での取調べの様子をチーフの所へネット中継してくれる様頼んできた。もっともなかなか口を開かないらしいが」
 「よし、おれ達も聞きに行こうぜ」
 と、ジョーが立ち上がったが
 「立入禁止だ。奴の自白を聞きながら会議をするそうだ」
 「チェッ」
 ジョーが舌を打ち、だが何かを思い出したようにフラッと食堂を出て行った。
 「今夜は泊まりかな」
 ジョーの後姿を見送りながら神宮寺が呟いた。

 射撃場の1番奥には仕切られた別の一室がある。銃の点検や動作確認を行う部屋で、短いが射撃レーンもある。
 万一の事故を考え壁はより強固に作られ、窓も顔くらいの大きさの物が3ヶ所ついているだけだ。
 その1つからジョーは室内を覗き込んだ。高木が1人でジョーのウッズマンを磨いていた。が、ふとジョーに気づくと苦笑して入るよう促した。ジョーはちょっと気まずげだったが結局ドアを開けた。
 「待ちきれないのか?」含み笑い気味に高木が言う。ジョーが口をへの字に曲げた。「この銃はおそらく10回も弾丸を撃ってはいないね。ほとんど新品だ。これをワルサーの代わりにするのかい?」
 ジョーは一瞬首を傾げたが、やがて小さく頷いた。
 「そうか・・・。これはこれから君に合わせていくのだろうな」
 高木はジョーがワルサーを撃てずに悩んでいる事を知ってた。JBで彼に銃を教えたのは自分だ。もしかしたら力になれるかもしれない。そう思った。が、高木はジョーが何も言って来ないうちは口を出さずにおこうと思っていた。
 そして今朝、ジョーはワルサーについての悩みではなく、それを乗り越え新しくパートナーのなるかもしれない銃を持って高木の元を訪れた。そしてその銃の整備を任せてくれたのだ。
 「高木さん」呼ばれハッとした。「狙撃部がなくなるって本当ですか?」
 「ああ、その話か」高木は静かにウッズマンを置く。「本当だよ。今度の編成替えで我々は捜査課に配属される予定だ」
 「やっぱりそうだったんだ・・・」
 「だが私はその方がいいと思っている」え?とジョーが高木を見た。「国内にもSATやテロ専門の対応機関が新しく組織し始めた。昔のように全部我々がやらなくてもよくなった。それに?狙撃部?なんてあまりよい名称ではないしね。子どもに仕事の説明もできない。捜査を充実させた方がいい」
 「・・・・・」
 「どうした?古巣がなくなるのが寂しいか?」
 「そういうわけでは・・・。それにあの頃おれは狙撃部にいるのかどうかもわからなかったし」
 ちょっと恥ずかしげに微笑む。ああ、こんな表情をするようになったのだな、と高木は思った。
 確かにあの頃のジョーは人を拒むようなきつい目付きと不機嫌を顔面に貼り付けて、自分と他の部員との間に一線を引いていた。
 あれは17才で大人の中に混じった彼の精一杯の自信と虚勢だったのではないか。ただ銃の腕だけはその自信と見合っているものだっただけに、ますますやっかいな子どもだった。
 「SATや狙撃部なんて部署が活躍する世の中なんていやだね」高木は再びウッズマンを手にした。「特にこれは元々スポーツモデルだからね。この銃が人間を攻撃するために使われるのではなく、君の命を守るために使われるものであってほしい」
 シルバーに輝くバレルやグリップをやさしく撫でる。
 「・・・・・」
 それは無理だ、と思ったがジョーは口に出さなかった。

 それは突然の移動だった。
 リーダーと呼ばれる男が洸を含む18人の若者を今までいた建物からバスに乗せどこかへ運ばせたのだ。窓には日よけが降ろされ、運転席と客席の間には巨大なスクリーンが張られ外を見る事はできない。そのスクリーンには公安がK4と名づけたこの組織の信念や、これからの行動が映され彼らはそれを覚え従う事を強制させられた。
 (これからの世界を考える・・・って、結局自分達の考えに合わないものはぶっ壊せ!って事じゃないか)
 スクリーンを見ながら洸は思った。彼はこれまでの2回の事件には関わっていない。
 実は彼が目的としていた友人はここにはいなかった。
 新宿をウロついて2日目に声を掛けられ、ついて行った先はどう見てもタレント事務所ではなかった。しばらくつき合って友人がいないとわかるとさっさと帰ろうとしたが、その矢先この組織が何かやらかそうとしている事がわかった。
 また自分と同類らしい男が内部の写真を密かに撮り、次の日にはいなくなっている事にも気がついた。
 友人の事は気になるが、このままここを見逃すわけにもいかない。もう少し様子を見ようと残っているうちに、洸より先にいた10人が?訓練?と称してあの2件の爆発事件を起こしたのだ。
 (このままこいつらの本拠地に連れて行ってくれればいいけど)
 一応目はスクリーンに向け、洸は思った。

 「ザーツ!?」ジョーが声を上げた。「あいつらはザーツの末端だというのか!?」
 「ザーツに問い合わせたわけじゃないから正確な事はわからんが」森がジョーの勢いを削ぐように言った。「あの男はそう言ってる」
 「くそォ、あいつら・・・。いったいどこまで手を伸ばしているんだ」
 ジョーが関わったドイツやフランスの事件に何らかの形で関わっていた国際テロリスト組織ザーツ。この日本でもまた─。
 「おまけに呼び名が?Sonntag(日曜日)?だと?一生休んでろ!」
 「寝てないだろう、ジョー」
 そう言う一平の目も少し赤い。
 「前の奴らがスペイン語で土曜日」神宮寺が呟く。「そして今度はドイツ語か」
 ジョーと一平が捕らえた男は翌朝になってやっと少し口を開いた。だが所属する組織名とその思想、それと日本で仲間になる者を集めている事以外は何もしゃべらなかった。
 こうしている間にもJBの捜査課と公安3課が協力して、行方を晦ませた若者達を捜しているが今だ手がかりすら見つかっていない。
 一度は所在を掴んでおきながらみすみす逃げられたのは3課のミスなので、関達は必死に行方を追っているらしい。
 「この件はこのまま3課とうちとの合同捜査となる。一平は引き続き待機してくれ」
 それから森はダブルJの方を向き、
 「君達には別の指令だ」2人が森に目を向ける。「1時に羽田空港に鷲尾長官が着く。迎えに行ってほしい」
 「鷲尾さんが?」ジョーが訊いた。「なんで?」
 「各国の警察のトップ会議が香港で行われる予定だったが、昨夜遅くその会場が爆破されてね。至急日本に変更になったんだ」
 「急ですね」神宮寺が言った。「ふつうなら中止か延期になるでしょうに」
 「主要20ヶ国、ICPOや国際秘密警察のトップが集まるんだよ。スケジュールのやり繰りだけでも大変だ。そう合わせられるものではない」森が自分のデスクについた。「本当は捜査課に行ってもらおうと思ったんだが、今回の事でみんな出払っている」
 「わかりました」
 2人は森の部屋を辞すると管理課に寄り車のキーを受け取った。お迎え用の車はトヨタのマークXだ。地下の駐車場に降りようとしてジョーが足を止めた。気掛かりそうにどこかを見つめている。
 「どうした?」
 「・・・いや」
 神宮寺の後に続き地下に降りた。ウッズマンは間に合わなかったな、と思う。
 神宮寺が運転席についたのでジョーは助手席に座った。
 「なあ、香港の会場は爆破された、と言ってたよな」神宮寺がうんと頷いた。「それってやっぱり長官達を狙ったって事かな。でも当時は夜で会議はしていなかったのに」
 「警告、かな」前に目を向けたまま神宮寺が言った。「だからおれ達が出るんだ」
 マークXがJBの正面ゲートを出た。
 

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