コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳   0 comments   0 trackback

つながる想い 5

 
 「やあ、神宮寺君」入国ゲートから長身の鷲尾が姿を現した。「ご苦労だね」
 「長官こそ、大変なめに遭いましたね」
 「ケガ人がいなかったのが不幸中の幸いかね。あ、彼はルイス・シャネル」鷲尾は同行している金髪の男を紹介した。「私の秘書の1人だ。知ってたかね?」
 「はい、本部で何度か」
 数ヶ月前、ジョーと共にソーに滞在している時に本部を訪れ、彼とは何度か顔を合わせている。鷲尾は?秘書?と言ったがもちろん優秀な国際警察官であり、長官の警護も兼ねての同行だ。
 「久しぶりです。よろしくお願いします」と、日本語もうまい。
 「ところで・・・ジョージは一緒ではないのか?」
 「ジョーならあそこで、怖い目で周りを警戒していますよ」
 神宮寺の言う方を見ると、セオリィ通りの距離を空けジョーが周りに気を配っていた。相変わらず鋭い目付きの、しかし存在感のあるその身から独特の雰囲気を醸し出している。
 「元気か?」
 「はい」
 「・・・そうか」
 かつての相棒であり親友であったアサクラ氏によく似たジョーの顔を見つめ、だがすぐに案内する神宮寺の後に続いて歩き出した。
 「森君から聞いたが、ザーツの末端を名乗り組織が日本で事件を起こしているそうだね」
 「はい、洸が単独潜入しています」
 「うむ・・・。実は香港での事件もどうやらテロ絡みらしい。あの後犯行声明が出たそうだ」やっぱり、と2人が顔を見合わせる。「もっともザーツに関係しているかはわからんが」
 「ザーツだろうがなんだろうが、見境もなくあっちこっちぶっ壊す奴は許せねぇ」バックミラーに映る鷲尾を一瞥しジョーが言った。「叩いてやりますよ」
 「ですが」ルイスが口を挟む。「今回は会議の無事進行と長官の身を第一に行動してください。そうモリチーフにも頼みました」
 「・・・・・」
 ジョーは眉を寄せチラッとルイスを見たが何も言わなかった。
 神宮寺の運転する車はこれから第一回目の会議が行われる赤坂のホテルに直行した。 会議場になる一室には鷲尾とルイスが入り、神宮寺とジョーはすぐ横のソファなどが置かれているスペースで待機する。と、彼らのように他国の警察のトップを警護する者でそのスペースはすぐに一杯になった。
 お互いに紹介し会話を交わす者もいたが、神宮寺もジョーも無言のまま部屋の1番近くのソファに腰を下ろし、会議が始まったため閉ざされたドアを見つめている。と、ジョーが時計を見た。
 「さっきから気にしているようだが・・・。何かあるのか?」
 「いや・・・」午後にはウッズマンを渡せると言った高木の言葉が気になっているとは言えなかった。が、もう一方では─、「洸からの連絡が入らないかと」
 「・・・ん」神宮寺も手首のリンクに目をやる。「気になるが今はこちらに集中しろ」
 「わかってるよ」
 ジョーが再びドアに目を向ける。
 「・・・仕事を選べないのも、辛いな」
 神宮寺がポツリと呟いた。
 会議後、鷲尾はこのままホテルに泊まるので、2人はJBに戻った。

 「すまない、ジョー」狙撃部々室で分解されたウッズマンを前に高木が言った。「トリガー・セイフティに不具合が見つかった。さすがにこれは見逃せない」
 トリガー・セイフティは文字通り引き金にある安全装置だ。
 高木の説明ではわずかなサビのため動作がスムーズではないらしい。パーツを1つ2つ取り替えれば済むくらいだが、事が安全装置だけにとてもこのままでは渡せないという。
 コルト社に至急パーツを送ってくれるよう以来したが、日本に着くのは早くて明後日なるそうだ。
 「そうですか・・・」
 高木のせいではないのだが、ジョーはがっかりして口籠もった。
 「ルガーは使いづらいかい?」
 「いえ、そんな事ないです。そういえばこのルガーとウッズマンは同じ22口径のロングライフル弾ですね。パラベラムより細いのでちょっと扱いにくくて」
 「その分装填数が多くなるが─。とにかくもう少し待ってくれ。君達の命を守る銃だ。完全な形で渡したい」
 「わかりました」
 ジョーがウッズマンに目をやる。
 長年箱の中で休んでいた銃が世の中に出るのを拒んでいるのか。それとも─。
 いや、余計な事は考えまい。今、この銃はおれの目の前にある。出会うべき運命だったのだ。後はおれの手の中で─。
 「お願いします」
 ジョーは高木に頭を下げた。
 おれの物になるのだったらいくらでも待とうと思った。父の銃はおそらくこれが最後の1丁なのだろうから。

 洸の2回目の通信から1日経つが、新たな情報は入らなかった。
 昨日はJBに待機していた一平だが、今日は捜査課と一緒に消えた若者達の行方を追っている。しかし現在JBが抱えている事件はこれ1件ではない。そのためメンバーのほとんどが外へ出ている状態だ。
 神宮寺とジョーも午後から行われる2回目の会議に出席する鷲尾の護衛のため、昨日のホテルに来ていた。
 「このホテルのレストランのオムライスはなかなかの味だよ」
 機嫌よく鷲尾が言ったとたんジョーがブッと吹き出した。
 そういえば昔・・・ジョーがまだ日本で鷲尾達と暮らしていた頃、一家でホテルに食事に出かけそこのメニューにオムライスがない、と鷲尾がしきりに文句を言いシェフに特別メニューとして作ってもらった事があった。
 どこのホテルで自分が何を食べたのかは忘れたが、オムライスを目の前にし満面笑みの鷲尾の姿だけはなぜかよく覚えている。
 「・・・余計な事を思い出さんでよろしい」
 クックッと笑いを抑えるジョーを横目に鷲尾が言った。
 「鷲尾さんがオムライスが好きだとは意外だな」
 会議室に入っていく鷲尾を見送り神宮寺が言った。2人は昨日と同じスペースに待機している。
 「オムライスにカレー、ハンバーグ─健と一緒だってママが言ってたぜ」
 「そういえばソーではよく出てたな、夕食に」
 「フランス料理はあまり好きじゃないらしい。向こうに住み始めた頃、ママは一生懸命フランス料理を習ったんだけど結局日本にいた頃と同じ、オムライスとカレー、ハンバーグがメインになったそうだ」
 鷲尾に対してはあまり愛想のないジョーだが、幸子の事を話す時は嬉しそうな穏やかな顔になる。やはり男親と女親の違いだろうか。
 ジョーにとって幸子は母親代わりであると同時に、平和と穏やかな暮らしの象徴でもあるのだ。
 と、突然、廊下の先から何人かの男が足早にこちらに向かってくるのが見えた。
 ジョーが壁から体を起こし神宮寺も立ち上がる。他にも待機していたSPや護衛の者達が近づいてくる男達に体を向けた。が、
 「─関」
 「ジョー?神宮寺君も」目の前で立ち止まったのは関や木村など公安3課の者達だった。「森さんが来ているのか?」
 「いえ、鷲尾長官ですが・・・。何事です?」
 「鷲尾さんが?─そうか」関がその場にいる者達を集めた。「警察庁公安3課の関といいます。実は─」
 彼の横で木村が英語で伝えている。
 「ゾンタークと名乗るテロ集団からこのホテルに爆弾を仕掛けたという声明があり、今ホテル内を捜索しております」一同がどよめいた。が、それ以上の騒ぎにはならない。「皆さんはここから離れず任務を続行してください。爆弾は我々が処理します」
 「やっぱり狙ってきやがったな。大丈夫か、関」
 「任せておけ。ただ1つ気になる情報がある」
 関は神宮寺とジョーだけに聞こえるように声をひそめた。
 「奴らの仲間が、この会議に参加している誰かに変装して潜り込んでいるらしい。人数はわからないが」と、2人を見て、「君達じゃないだろうな・・・。おれと熱い夜を過ごした回数は?」
 「ない!」
 「正解だ」関が口元を歪める。「とにかく君達もここを離れるな。充分注意してくれ」
 それだけ言うと関も捜索隊に加わり行ってしまった。
 「こんな時に何バカな事言ってンだ、あいつは」
 「大したものだな」神宮寺が苦笑して関の消えた方へと目を向けた。「しかしおれ達も協力した方がいいのかな。鷲尾さんにはルイスがついているし」
 「関がここにいろって言ってんだから、いようぜ。チーフからの連絡もないし」
 ジョーが再び壁に背中を預ける。
 普通に考えれば爆弾を仕掛けられているホテルで会議などしている場合ではない。昼間なのでホテルに残っている人間は少ないが、どこで爆発するかわからないのだ。現に他の宿泊客やレストランの客などは避難を開始している。もうじきここにもその命令がくるだろう。
 会議室とその周辺は、開始前に皆で不審物などの捜索を念入りに行っているのでとりあえず安全だ。─が、結局関達はホテル内で爆弾を発見する事はできなかった。
 「ガセか?それとも脅しだったのか?」
 「了解しました」神宮寺がリンクを切った。「チーフからだ。鷲尾さんは別のホテルに移る。そこまで護衛だ」
 「チェッ、余計な仕事増やしてくれて、よっ」ブツブツ言いながらもジョーは会議室から出て来た鷲尾に素早く寄り、事の次第を告げた。「荷物は後でおれ達が取りに来ますから、長官は先に移ってください」
 「わかった」
 鷲尾が申し出に従う。
 神宮寺が先導し、ジョーとルイスが鷲尾の左右についた。他のトップ達も大使館か他のホテルに一時移る。
 「車を正面に回してくる」
 神宮寺が一人エレベータで地下駐車場へ降りていった。後の3人はロビーで降り、避難する人々に紛れた。そのまま何人かのトップやその護衛達と正面玄関から前庭に出た。
 と、突然、近くに停まっていた車がボンッ!と跳ねた。男が3人、何か小さな物を正面玄関にいる人々に向かって投げつけてくる。何かに当たるとバンッ!と破裂した。
 「鷲尾さん!」
 大した威力ではないが当たれば火傷は免れまい。ジョーは自分の体を盾に鷲尾を庇った。
 目の前で破裂した。小さな炎がジョーの髪や腕を焼いた。
 「ルイス!長官を車に!」
 続け様に爆弾が放り投げられる。
 「ジョー!」
 車内から神宮寺が呼ぶ。ルイスが鷲尾を車内に押し込んだ。その後ろに爆弾が飛ぶ。ジョーがルイスに覆い被さった。破裂音が響きジョーの背中から炎が上がる。
 「乗れ!」
 幸い炎はすぐに消えた。ジョーが乗り込もうとしたが、
 「関」
 男達を追って、関が飛び出してきた。1人の男に組み付く。が、足蹴にされひっくり返った。
 男が爆弾を取り出し関に投げようとした。
 「危ない!」
 ジョーが胸のホルスタからルガーを抜こうとした。が、手が引っかかった。ルガーが途中で止まる。
 「くそォ!」
 銃は諦めジョーが男に体当たりした。男はあっけなくひっくり返る。
 ジョーが関を起こそうと立ち上がった瞬間、すぐ近くで今までより大きな爆発音が響いた。とっさに関の前に立ち塞がる。
 「ジョー!」
 関の叫び声と共にジョーの体が後ろに飛んだ。


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