コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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つながる想い 8

 「血は止まったし、とりあえずこれで大丈夫だろう」特別課々長の左近が医療用のバンソウコウをジョーの脇腹にペタッと貼った。「でもJBに戻ったらちゃんと手当てしてもらった方がいい」
 「ありがとう、左近さん」シャツを着ながらジョーが言った。「でもおれ達すぐ帰れるんですか?留置場に泊まらなくてもいいのかな」
 「冗談じゃない。君達を入れておいたら、一時(いっとき)も目を離せなくなる」いたずら気に見ているジョーの目を睨み返してやる。「さっさと送検してやるさ」
 「ひでェ・・・」
 ジョーが口を曲げて呟いた。ふと室内を見回す。新宿署内にあるJB直属の特別課の室内はあまり人がいなかった。
 「人、少ないですね」
 「─どこかの誰か達が騒ぎを起こしたから、その後始末に追われている」
 「
 ジョーは大きな体を竦めてソファに座りなおした。左近がコーヒーを持ってきてくれた。礼を言って受け取る。
 「ところであいつら、吐きましたか?」
 「まだ報告は来ていないが・・・」コーヒー片手に左近もジョーの向かいのソファに座った。「なに、こっちには?落としの山さん?ならず?川さん?がいるんだ。時間の問題だね」
 新宿署に連衡された?8人?は、神宮寺の申し出により左近が呼び出され、そのまま特別課に引き渡された。口を閉ざす6人に特別課きっての?落としの川さん?こと川口刑事が尋問しているらしい。神宮寺が同席している。
 「洸君に続いて一平君も潜入したらしいね。それもチーフの指令もなしに」
 「ほんと、困った奴らですよね」
 「あの4人をもう一度養成所からやり直しさせたいとチーフが言っていたぞ」
 どーして?4人?なんだ?と、ジョーが首を傾げた。と、ノックがし神宮寺が入ってきた。
 「おっ、神宮寺。奴らはどうした?」
 「吐いたぜ。今、川口さんが報告書をまとめてくれている」
 ジョーの横に腰を下ろした。
 「お前、なんかヘンだぞ」ジョーが覗き込む。「目の焦点が合っていないみたいだ」
 「ん・・・。川口さんの尋問術に当てられた」神宮寺は左近が差し出してくれたコーヒーを受け取り、ペコッと頭を下げた。「心理攻撃をしたかと思うと、全然別の話をして─でもなぜかそれが不安になるんだ。そう思っているとまた心の奥底を攻められて・・・。おれまで何か白状したくなったよ」
 ヘェェ、とジョーが驚く。この神宮寺がそこまで言うのだから、その川口とやらはすご腕の持ち主なんだろうな、と思う。見ると左近が満足そうに2人を見ていた。川口は左近の懐刀のようだ。
 「で、お前は大丈夫か?」
 「ちょっと傷口が開いただけだ。もう閉めたよ」
 「そうか・・・。ファスナーでも付けておけば手間が省けるのにな」
 「──!」
 ジョーがソファの背もたれにドンッと仰け反った。まじまじと神宮寺を見る。川口の毒気は相当なものだ。いったいどんな猛者だろう。と、ドアがノックされ1人の年配の男が入ってきた。目の細い穏やかな顔の白髪の男だ。
 「報告書上がりました」左近に書類を渡すと向かい側に座っている2人にニコッと笑いかけ頭を下げた。ジョーもつられてピョコンと頭を下げる。「どうした、神宮寺君。具合でも悪いのかい?」
 「い、いえ、なんでもありません、川口さん」
 「ええっ!このじいさんが!?」
 ジョーが叫び、こら!バカ!と神宮寺がその口を塞いだ。
 「かまわんよ、君達から見れば私は立派なじいさんだ」
 ハハハ・・・と豪快に笑う。
 「だからそろそろ後継者がほしいところだが・・」チロッと神宮寺を見る。が、ブルル・・と首を振られると、「そうか。君ならいい尋問官になれると思うがな。ま、その気になったらいつでも歓迎するよ。では」
 そう言い静かに部屋を出て行った。
 「すごいな、神宮寺君。川口さんに見込まれるなんて」左近が言った。「どうだい?」
 「と、とんでもない。体と精神が持ちません」
 「・・・髪、ハゲそうだよな・・」
 ジョーが呟き神宮寺に睨まれた。だがさすが新宿界隈を任されている特別課。JBに劣らず変な・・いや、特殊能力の持ち主がいるな、と感心した。
 「そうだ報告書。これJBに持って行っていいですか?」
 「いいよ」左近がジョーに報告書を渡す。「命令で我々はこの件から手を引いている。洸君を探し出せなかったのが残念だ。君達の気をつけて、頑張ってくれ」
 「はい」
 2人は頷き、新宿署を後にした。

 情報課のスーパーコンピュータには、日本はもちろん世界各国で起こった事件事故の詳細が刻々と寄せられストックされていく。
 もしJB内で調べたい事件があればキーワードを打ち込めばすぐピックアップされるようになっている。
 しかしそのデータの量は膨大だ。情報課でも全部のデータに目を通すのは無理だ。が、今、1つの小さなニュースがスーパーコンピュータに記録された。
 そのニュースに目を止める者はまだいない。
 
 JBに戻った神宮寺とジョーは川口がまとめた報告書にひと通り目を通したが、以前捕まえた奴らの証言同様あまり重要な内容ではなかった。
 組織の全容や計画など知っているのはごく一部の人間なのだろう。下っ端にはその時その時に命令されるのだ。
 だが1つだけ気になる情報があった。それは近々奴らが何か大きな仕事をするらしいという事だ。
 その作戦名が?フロイントリヒ?。
 「フロイントリヒ・・・Freundlich・・かな・・・」ジョーが呟く。「ドイツ語で?優しい?・・・。絶対?優しい作戦?とは思えねェけどよ」
 「だが、それしかなさそうだ」
 パソコンで外国語の検索をかけていた神宮寺が言った。
 彼は公安3課に連絡を取り、先日若者達がいた建物の遺留品の中にこの言葉に関する物がなかったか訊いた。答えはNOだった。
 「?地球に優しい?って言葉はよく使われるけど、おれ達にも優しくあってほしいな」
 「優しいテロリストなンてやだぜ。─おっ」
 ジョーのスピードマスターが振動した。
 「一平か?いや、洸だ」スクリーンに文字が走る。「成田、VIP、参加─くそォ、これだけかよっ」
 ジョーがスクリーン面をピンッと弾き神宮寺を見る。
 「成田、VIP、か」神宮寺の指がキーボードの上を走る。情報課のスパコンにアクセスする。「これだっ」
 神宮寺の指差すモニタ画面をジョーも見た。
 「成田空港にアメリカの外務大臣が着く。今日の4時だ」あと1時間もない。「飛ぶぞ!」
 神宮寺の言葉にジョーが1階下の捜査課々長の部屋まで走る。
 山田が在室だったが、有無を言わせず屋上ヘリポート横の格納庫のキーをひったくり屋上に駆け上がった。そこには小型ヘリが1機だけ常駐している。
 「早いな」
 飛んできたキーを神宮寺が片手でキャッチした。
 「始末書を書くの手伝ってくれよ」
 ジョーが格納庫の上部を開く。と、神宮寺に続きヘリに乗り込んだ。
 ブレードが回転しスキッドが上昇する。機首が成田に向く。と、ヘッドセットに山田からの通信が入った。
 「はい、神宮寺です。すみません、実は─」
 ひと通り説明する彼を横目に、ジョーは内ポケットから銀色のコルト・ウッズマン・マッチ・ターゲットを取り出す。
 急いでいたのでホルスタは付けずこの銃だけ掴んできた。現場に持ち出すのは初めてだ。
 ワルサーP38コマーシャルより長い6インチのバレルがジョーの目には美しく、頼もしく映る。
 父はこの銃をあまり使わなかったようだが、それでも自ら握るグリップには父のぬくもりが残っているようだ。と、
 「その銃か?」通信を終えた神宮寺が言った。「関さんが持っていたという、親父さんの銃は」
 ジョーが無言で頷く。だがその横顔には今まで影を潜めていた自信と不敵さ、そして強い意志と期待に溢れていた。
 神宮寺は、ジョーが以前の自分を取り戻した源を知った。そしてその口元にかすかに笑みを浮かべると再び口元を引き締め前方に目を向けた。

 この情報はJBから公安3課を介し警視庁警備課や空港警察に伝えられた。
 外務大臣の入国ゲートは、予定されていた所から別のゲートに変更された。
 成田空港に通じる道路の検問は強化され、空港の要所に立つ警官も増やされた。
 ダブルJが空港に降りた時、大臣の乗る飛行機はもう着陸しサテライトに向かってゆっくり移動していた。
 2人は各警備とはまったく別に行動できる。JBの情報課から刻々と伝えられてくる情報を耳(イヤホン)に、変更になった入国ゲートに向かった。
 「なあ、神宮寺」ゲートの前には出迎えの政府関係者が集まっていた。大臣はまだ姿を見せない。「洸の通信の一番最後にあった、?参加?ってなんの事だ?」
 「うん・・。おれもずっと考えているんだが・・」目をゲートに向けたまま神宮寺が呟く。「もしかしたら、この仕事に洸が参加するのかもしれない」
 「大臣を襲うって言うのかっ。─もしそうだとしたら─」
 「井上さん!大臣の退出ルートを教えてくれ!」
 リンクに向かって神宮寺が言った。
 情報課々課長の井上の返事はすぐに来た。今、皆が集まっている臨時ゲートを出て50mほど行くと、やはり臨時の出口がある。そこから迎えの車に乗る予定だ。
 「あっちだ!」
 2人は出口に向かった。大臣はSPや空港警察が守っている。できれば?奴ら?が大臣を眼にする前に片付けるのが一番だ。狙うのは出口から外へ出る一瞬か。
 「くそォ、まさかバイク軍団とかじゃねえだろうな」
 「そんな目立つ奴だったら検問に引っかかっているさ」
 だが、もし1台づつ通ったとしたら─。
 神宮寺のこの考えは当たっていた。奴らは午前から少しづつ・・・1台づつ時間を掛けて空港の駐車場に入ったのだ。そしてリーダーの合図を待っていた。
 「大臣達が出て来た」
 チラッと目を入国ゲートに向け、また外への出口に戻す。そこにも警備の警官が何人も立っていた。神宮寺達の姿を目に留め、そのうちの2人がこちらに向かおうとしたその時、
「─バイクだ」
 ドドド・・・と轟音が近づいてきた。こちらに向かっていた警官の動きが止まる。あわてて持ち場に戻った。
 その後を追うように神宮寺とジョーも出口へと走る。見ると250ccクラスのバイクが5台、こちらに向かってくる。
 臨時出口は通常使用していない事もあり、周りに車は止められていないのでかなり見通しが良い。スペースも充分ある。今は迎えや警備の車が3台入っているが、バイクがそこに向かっているのは明らかだ。
 だがこれはネズミがワナに飛び込んでくるようなものだ。
 相手がバイクで乗り付けてくるかもしれない事は、JBからすでに警備課に伝わっている。周りは固められているのだ。それを知らずにバイクは一直線に突っ込んでくる。
 「洸だ」
 ジョーの目が洸の姿を捉える。
 5台の1番後ろ、全員フルフェイスのヘルメットを被っているが体つきやバイクの乗り方でわかる。と、いう事は、他のバイクの連中も洸同様街中で声を掛けられた?素人?という事か。
 「やりにくいぜ」
 ジョーが出しかけたウッズマンを止めた。と、バイクの先頭の男が手を上げた。停まる合図らしい。が、1番後ろを走っていた洸は、停まった他のバイクを追い抜いた。が、すぐターンして戻っていく。
 先頭の、おそらくリーダーだろう赤いバイクの男が素早く避けた。と、洸はその後ろにいたバイクに自分のバイクをぶつけた。
 ガシャン!とぶつけられたバイクが倒れる。
 リーダー以外の3台のバイクは、急な出来事に右往左往している。そこへ駆けつけた警備が銃を向け止まるように指示する。
 「赤い奴がリーダーだ!爆発物を持っている!」
 フルフェイスを取り洸が叫んだ。
 騒ぎになっているのはわかっているので、大臣一行はこちらには来ないだろう。それを知っているのかどうかわからないが、リーダーの男は迎えの車に向かって突進してくる。
 「こんな所で爆発されたらかなわない」
 神宮寺が44オートマグを取り出す。しかし少し躊躇った。
 44口径のマグナム弾だ。バイクの車体を撃ち抜くのは簡単だが、そのショックで爆発したら・・・。相手が重量のある大型車ならまだしも、250ccクラスでは・・・。
 「おれがやる」
 カシッと、ジョーがウッズマンを取り出した。22口径RL弾ならバイクの細いタイヤだけを狙える。
 ジョーは両手でウッズマンを握り、立射でバイクに向かう。もう距離がない。あまり建物に近づけるのも危険だ。ジョーの指がトリガーに掛かる。
 キーン!
 空気が一直線に裂けた。赤いバイクの前輪がバンッ!と裂け転倒しズーと滑っていく。が、建物にぶつかる前で止まった。男は放り出されゴロゴロ転がる。
 「確保だ!」
 警備が男に駆け寄りその身を押さえる。
 「ジョー」
 洸がジョーに走り寄った。
 「お前も確保だ」
 ジョーがグリップ底で洸のおデコをコツンと叩いた。

 (ここっていったいなんだろう・・・研究所みたいだが・・・)
 目の前に建つ大きな建物を一平は・・いや一平達は見上げた。
 都内を出発して丸1日掛けて?ここ?へ来た。ただ途中までは道中目隠し状態だったので、ここがどこだかわからない。周りが見えたのは、ここへ来る時に乗った船から見た海だけだ。
 中に入ると色々な機械の置かれている部屋がたくさんあった。そして─。
 (これは見た事あるな・・・。まるで原子炉みたいだけど・・・)
 まさか、と一平は苦笑してもう一度?それ?を見上げた。が、その表情はだんだんと強張っていった。


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